
歯を失う原因といえば「むし歯」や「歯周病」が有名ですが、実は第3位に挙げられるのが「歯根破折」です。
歯根破折は一度起こると治療が難しく、多くの場合は抜歯につながる深刻なトラブル。
ここでは、歯根破折の特徴や原因、そして神経の有無によるリスクの違いについて詳しく解説します。
※ 公益財団法人8020推進財団
「第2回 永久歯の抜歯原因調査」(2018)
目次
■歯根破折とは?
歯根破折とは、歯の根の部分が割れてしまう状態を指します。歯冠(歯ぐきの上から見えている部分)が欠けるのとは異なり、歯ぐきの中で見えない部分が割れるため、発見が遅れることも少なくありません。
◎なぜ歯根破折が問題になるのか
歯根が割れると、そこから細菌が侵入して炎症を起こし、歯ぐきの腫れや膿の発生につながります。
割れた部分は自然に治ることがなく、最終的に抜歯が避けられないケースが多いのです。つまり、歯根は「歯を支える柱」であり、その破折は歯の存続に直結する問題といえます。
■歯根破折が起こる原因
歯根が割れてしまう背景には、いくつかの要因があります。
◎神経を失った歯の脆弱化
根管治療を受けて神経を取り除いた歯は、水分を失って硬さが増す一方で、しなやかさを失います。そのため強い力が加わると、健康な歯よりも割れやすい状態になっています。
◎咬合力や歯ぎしり
強い噛みしめや歯ぎしりは、歯根に大きな力をかけます。特に夜間の無意識な歯ぎしりは、長期的に歯を疲弊させ、破折リスクを高めます。
◎大きなむし歯や詰め物
むし歯治療で大きく削った歯や、金属の土台が入っている歯は、残っている歯質が薄く、噛んだ時の力が一部に集中して割れやすくなります。
◎外傷
スポーツや事故による外傷で歯に強い力が加わると、歯根が割れることがあります。特に前歯は強い衝撃を受けやすいため注意が必要です。
■神経のある歯とない歯のリスクの違い
歯根破折のリスクは「神経があるかないか」で、実は大きく異なります。
◎神経のある歯
神経が残っている歯は、神経があることで歯が生きている証拠となり、代謝や感覚を維持しています。例えば、もしひびが入ったとしても痛みを感じるため、早期に異変に気づける利点があります。
◎神経のない歯
一方、神経を取った歯は感覚がなくなるため、ヒビや割れが起きても気づきにくいという欠点があります。気づいたときにはすでに感染が広がり、抜歯が避けられないことも珍しくありません。
■歯根破折の症状と見つけ方
歯根破折は見えにくいため、多くは症状をもとに診断されます。
◎主な症状
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噛むと違和感や痛みがある
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歯ぐきに腫れや膿ができる
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治療済みの歯が繰り返し腫れる
これらの症状があれば、レントゲンやCT検査で歯根の状態を確認する必要があります。
■歯根破折を防ぐために
歯根破折は一度起こると治療が難しいため、予防が大切です。
◎神経を守ることが重要
むし歯を早期発見・早期治療して神経を残すことが、歯根破折を防ぐ大きなポイントです。神経を守ることで歯のしなやかさが保たれ、割れにくくなります。
◎噛み合わせや歯ぎしりへの対策
歯ぎしりの習慣がある人は、マウスピースを使った就寝時の保護が効果的です。また、噛み合わせの調整で局所的な負担を減らすことも予防につながります。
◎定期的な歯科検診の受診
歯根破折の早期発見は難しい場合があるため、定期的に歯科医院でチェックを受けておくことが安心につながります。
【歯根破折を起こさないためには日頃からのケアも大切です】
歯を失う原因の第3位とされる歯根破折は、発見が遅れると多くの場合で抜歯に直結しまてしまうことがあります。神経が残っている歯は割れにくく、異常にも気づきやすいのに対し、神経のない歯は脆くて気づきにくいというリスクがあります。
歯根破折を防ぐためには、神経をできるだけ守り、歯ぎしりや外傷の予防を心がけることが大切です。自分の歯を長く使い続けるために、日々のケアと定期的な歯科受診を忘れないようにしましょう。
