「よく噛むこと」が健康寿命を延ばす大きなカギになることをご存知でしょうか。
食事のとき、しっかり噛むことを意識していますか?
「噛む力」は、ただ食べ物を細かくするためだけのものではありません。最近では、よく噛むことが脳の活性化や栄養吸収の促進、さらには健康寿命の延伸にもつながることが注目されています。
本記事では、「よく噛む」ことの効果や、噛む力が弱くなることで起きるリスク、オーラルフレイルとの関係について分かりやすく解説します。
目次
■「よく噛む」ことで得られる健康効果とは
「噛むこと」で体にどんなメリットがあるのか、改めて見ていきましょう。
◎消化・吸収を助ける
しっかり噛むことで食べ物が細かくなり、胃腸への負担が軽減されます。唾液には消化酵素が含まれているため、噛む回数が増えることで消化がスムーズになり、栄養の吸収効率も高まります。
◎脳の活性化につながる
噛むことで脳への血流が促され、認知機能の維持に良い影響を与えるとされています。特に高齢者では、「噛む刺激」が脳を活性化し、認知症予防に関係しているという研究も報告されています。
※神奈川歯科大学大学院 山本龍生教授
「歯科から考える認知症予防への貢献」(2017年)
◎生活習慣病の予防にも
よく噛むと満腹感を感じやすくなるため、早食いを防ぎ、肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防にもつながります。噛む回数が多い人ほど、食べすぎを防ぎやすい傾向があります。
■「噛む力」が弱まるとどうなる?オーラルフレイルに要注意
「噛む力」が弱くなると、思わぬ健康リスクが生じることも。特に高齢者にとっては注意が必要です。
◎オーラルフレイルとは?
オーラルフレイルとは、噛む・飲み込む・話すなどの口の機能が衰えることを指します。初期の段階では「噛みにくい」「食事が遅くなった」「むせやすくなった」などの変化が見られます。加齢のせいだと放置されがちですが、放置すると、筋力の低下や全身のフレイル(虚弱)へとつながることもあります。
◎噛めないことで起こる問題
噛む力が落ちると、食べられるものが限定され、やわらかいものばかり好むようになったり栄養が偏りやすくなります。
柔らかいもの中心の食事は咀嚼回数も減るため、さらに噛む機能が低下するという悪循環に。結果として、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
■噛む力を保つためにできること
日常生活の中でできる「噛む力」の維持方法についてご紹介します。
◎よく噛む習慣をつける
食事の際は一口につき30回を目安に噛むよう意識しましょう。玄米や根菜、海藻など、自然に噛む回数が増える食品を取り入れるのもおすすめです。
◎口腔内の健康を保つ
むし歯や歯周病は噛む力の低下につながるため、定期的な歯科健診が大切です。入れ歯は長期間使うことで合わなくなってくる場合があるため、適切に調整されたものを使うことで、噛む力の低下を防ぐことができます。
◎舌や口周りの筋肉トレーニングも有効
口のまわりの筋肉を鍛える簡単な体操や、口を大きく動かす発声練習(パタカラ体操など)は、噛む力の維持に役立ちます。テレビを見ながらでもできるので、毎日の習慣に取り入れてみましょう。
【「よく噛むこと」が健康寿命を支える】
噛む力は見落とされがちですが、健康寿命に大きく関係する重要な要素です。よく噛むことで得られる効果は多岐にわたり、身体全体の機能維持にもつながります。
加齢に伴って噛む力が低下しやすいため、若いうちから日々の習慣として意識することが大切です。自分の歯で食べる楽しみを長く保ち続けられるよう、今日から「よく噛む」を意識してみてはいかがでしょうか。