6月の記事『詰め物・被せ物の治療|セラミック治療の流れについて』では、セラミック治療の被せ物治療の流れや素材のメリットについて紹介しました。
ただ、多くの患者さまが「早く歯を治してほしい」と希望される一方で、詰め物や被せ物の治療を行う前に、歯ぐきの治療が必要なことがあるのをご存じでしょうか?
実は、歯ぐきに炎症や出血があるままでは、どんなに精密な詰め物・被せ物を入れても長くもたない可能性があるのです。
今回は、「なぜ歯周病治療を先に行うのか?」という理由を、できるだけわかりやすく解説します。
目次
■詰め物・被せ物治療の成功に必要なのは“健康な歯ぐき”
被せ物や詰め物は、ただ穴にフタをするだけではありません。歯と歯ぐきの境目にぴったりフィットさせることで、初めてしっかり機能するのです。
◎歯ぐきに炎症があると、型取りがうまくいかない
詰め物・被せ物を作るためには、まず「歯型取り」が必要です。この型取りが歯に合うように精密にできていないと、ぴったり合う補綴物(ほてつぶつ=詰め物・被せ物)は作れないのです。
歯ぐきに炎症があると出血や腫れが起きて正確な型が取れず、結果的に作成した詰め物や被せ物に隙間ができてしまいます。その結果、隙間に汚れや食べかすが溜まり、むし歯が再発しやすくなったり、すぐに取れてしまったりする原因になります。
◎きれいに仕上げるためにも「出血していない歯ぐき」が大切
詰め物や被せ物は、見た目にも大きく関係します。セラミックなどの白い素材を使う場合、歯ぐきが健康な状態でないと、境目が黒ずんだり、見た目が悪くなったりすることがあります。
そのため、見た目にも自然で美しく、長持ちさせるためには、歯ぐきの健康が欠かせないのです。
■歯周病治療で整える「土台づくり」
詰め物や被せ物を入れる歯を「家の柱」に例えると、歯ぐきや骨は「土台」です。どんなに立派な柱でも、土台がゆるんでいたら建物はすぐに傾いてしまいますよね。
◎歯周病の治療とはどんなことをするの?
歯周病治療では、次のような処置を行います。
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歯周ポケットの検査やクリーニング
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プラーク(歯垢)や歯石をしっかり除去
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歯ブラシ指導で「正しい磨き方」を習得
これらは「歯周基本治療」と呼ばれるステップで、歯ぐきを健康な状態にするための大切な準備です。
◎プラークコントロールが成功のカギ
せっかく歯周病を治療しても、毎日の歯磨きがうまくできていないと、すぐに歯周病に戻ってしまいます。
そのため、歯科医院ではプラーク(歯垢)をうまく取り除くための磨き方も、一人ひとりの歯に合わせて指導を行います。患者さま自身がしっかりプラークコントロールできるようになることが、詰め物や被せ物の「長持ち」につながります。
■治療の順番に意味がある|よくある誤解と本当の話
「とにかく早く詰め物を入れてほしい」と思う気持ちはよくわかります。でも、焦って仕上げてしまうと、後で再治療になったり、余計にお金や時間がかかったりしてしまうこともあります。
◎健康な歯ぐきになってからの方が、結局“早い”ことも
実は、歯周病治療をきちんと行ってから詰め物や被せ物を入れることで、結果的に長持ちし、再治療の可能性も低くすることができます。最初に歯周病治療を行い、少し時間がかかったとしても、トータルで見ると治療期間が短く済むこともあります。
◎「急いで仕上げた治療」がトラブルのもとに
出血したまま型取りした被せ物は、時間がたつとグラグラしたり、隙間から再度むし歯になったりすることがあります。
「一度で早く終わらせたい」と思って急いでしまった治療が、結局何度も作り直しになってしまうのは、とてももったいないことです。
【歯ぐきを整えることが、詰め物・被せ物の安定に】
詰め物や被せ物の治療は、歯の形を整えるだけでなく、その土台である歯ぐきが健康であることが大前提です。
だからこそ、歯周病治療が欠かせません。